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右心機能に着目したV-A ECMOからの離脱指標

こんにちは、佐々木です。ECMOにまつわる文献の紹介すると言いつつかなり間が空いて漸く2回目です。 ECMOのごく簡単な説明は こちらの記事 をご覧下さい。 心臓の弱った患者さんにV-A ECMOを装着した後、ECMOはずっと着けていられません。その為いつかは離脱しなければなりませんが、安全なECMOからの離脱の指標は明らかとなっておらず研究が進められています。これまで左心機能にばかり目が向きがちでしたが、 2021年4月にJACCからpublishされたV-A ECMO患者79例を対象とした 韓国の単施設観察研究“Prognostic Implication of RV Coupling to Pulmonary Circulation for Successful Weaning From Extracorporeal Membrane Oxygenation” はV-A ECMOからの離脱の指標として右心機能に着目したユニークなペーパーです(まだオンライン公開のみ)。 既存のV-A ECMOからの離脱指標(LVEF>20%、LVOT-VTI≧10cm、僧帽弁輪S'≧6cm/s) はECMOの流量を極端に下げた状態でエコーを用いて左心系を評価していましたが、流量を下げる事により急激な血圧低下を来たし得る為、流量を下げないで評価出来ないか?というところから着想した様です。 V-A ECMOの流量を十分に維持すると左心は増大した後負荷のため機能評価が難しく、一方右心はECMOによる脱血のため前負荷が低下し単純な収縮力の評価が難しいと考えられます。そのため今回着目しているのが「右室-肺動脈カップリング」となります。右室の縮みやすさ(=エラスタンス:Ees)は前負荷や後負荷に依存しない収縮性の指標であることが知られ、血管の特性を動脈実効エラスタンス(Ea)と併せて心室のポンプ機能や心収縮のエネルギー効率をEa/Ees(心室と動脈のカップリングの指標)で評価出来るとされています(心機能が低下すると高値となる)。 この「右室-肺動脈カップリング」をエコーで推定するべく様々計測したところ、ECMOフルサポート下で計測した三尖弁輪S'/RVSP>0.33(右室-肺動脈カップリングの逆数的な指標)がV-A ECMOからの離脱成功をよく予測し既存の基

国内留学と日本心エコー図学会第32回学術集会でのBest Case Presentation受賞について

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この度、2021年4月23-25日に行われました上記学会にて症例発表を行い、上記を受賞し、国立循環器病研究センターへの国内留学を交えて報告いたします。 このブログに記事を投稿させていただきますのは、おそらく初めてのことであり、自己紹介からさせていただきますが、私は初期研修から前橋赤十字病院にて勤務させていただいており、心臓血管内科医師9年目星野です。本来であれば国内留学の経験を前橋に戻ってすぐにブログに掲載させていただきたいと考えていましたが、いろいろあって遅くなってしまい、上記受賞をきっかけに、合わせて掲載させていただく事としました。 私は、一昨年度の1年間、大阪府の国立循環器病研究センターにて専門修練医として、心不全科及び、肺循環科にて勤務させていただきました。前半の心不全科にて、心筋症や弁膜症を主に経験させていただき、心筋症の診断・治療、弁膜症の手術やカテーテル治療までのストラテジーの検討を経験しました。また、移植医療への道や緩和チームに参加させていただき、緩和医療を経験させていただきました。後半は希少疾患である様々な病型の肺高血圧症症例を担当させていただき、またBPAを(多くは助手ではありますが)経験させていただきました。成人先天性心疾患に対してのカテーテル検査・治療にも携わらせていただく等の経験をさせていただきました。 (私がそうであったように)国立循環器病研究センターをいうと無尽蔵に国費を用いて特殊な検査/試薬を行っているイメージを受けるかもしれませんが、そういうことはなく、共通して言えることは、一つ一つのデータを基本に忠実に、そして精密に吟味しており、この過程を経験する事が非常に勉強になりました。私は同院への留学を行う前までは、弁膜症の重症度評価等に関しては、生理検査でのレポート頼りであり、その計測の原理も十分に理解できていませんでした。心不全科の日々の生活は、午前午後に分かれるDuty(週10コマ)を、心エコー、心カテ、経食道心エコー等に分かれて行います。特に心エコーDutyでは、熟練の検査技師さんに混じり検査を行い、心筋症、弁膜症等の検査を行います。私のレポートの記載によっては治療方針が大きく変わる事となり、ひいては患者様の人生に影響を与えかねない為、正確な評価が必要となります(もちろんスタッフのチェックが行われ、必要事項の取り漏らしは