国内留学と日本心エコー図学会第32回学術集会でのBest Case Presentation受賞について

この度、2021年4月23-25日に行われました上記学会にて症例発表を行い、上記を受賞し、国立循環器病研究センターへの国内留学を交えて報告いたします。

このブログに記事を投稿させていただきますのは、おそらく初めてのことであり、自己紹介からさせていただきますが、私は初期研修から前橋赤十字病院にて勤務させていただいており、心臓血管内科医師9年目星野です。本来であれば国内留学の経験を前橋に戻ってすぐにブログに掲載させていただきたいと考えていましたが、いろいろあって遅くなってしまい、上記受賞をきっかけに、合わせて掲載させていただく事としました。

私は、一昨年度の1年間、大阪府の国立循環器病研究センターにて専門修練医として、心不全科及び、肺循環科にて勤務させていただきました。前半の心不全科にて、心筋症や弁膜症を主に経験させていただき、心筋症の診断・治療、弁膜症の手術やカテーテル治療までのストラテジーの検討を経験しました。また、移植医療への道や緩和チームに参加させていただき、緩和医療を経験させていただきました。後半は希少疾患である様々な病型の肺高血圧症症例を担当させていただき、またBPAを(多くは助手ではありますが)経験させていただきました。成人先天性心疾患に対してのカテーテル検査・治療にも携わらせていただく等の経験をさせていただきました。

(私がそうであったように)国立循環器病研究センターをいうと無尽蔵に国費を用いて特殊な検査/試薬を行っているイメージを受けるかもしれませんが、そういうことはなく、共通して言えることは、一つ一つのデータを基本に忠実に、そして精密に吟味しており、この過程を経験する事が非常に勉強になりました。私は同院への留学を行う前までは、弁膜症の重症度評価等に関しては、生理検査でのレポート頼りであり、その計測の原理も十分に理解できていませんでした。心不全科の日々の生活は、午前午後に分かれるDuty(週10コマ)を、心エコー、心カテ、経食道心エコー等に分かれて行います。特に心エコーDutyでは、熟練の検査技師さんに混じり検査を行い、心筋症、弁膜症等の検査を行います。私のレポートの記載によっては治療方針が大きく変わる事となり、ひいては患者様の人生に影響を与えかねない為、正確な評価が必要となります(もちろんスタッフのチェックが行われ、必要事項の取り漏らしは無いように配慮されています)。測定の原理などが分からないまま検査を行う事も出来ない為、正書を読んで準備を行いました。どういう原理でどの数値が算出されるかを理解することで、各手法の限界を知ることが出来、外れ値が出た場合に何がどのように作用して異常値を出しているかを把握することが出来るようになります。心不全科の部長の泉知里先生からは『予想と外れる結果が得られた場合はその理由をよく吟味するように』とご指導を頂きました。週に1度ある部長回診では1人1人の患者様を部長が回診して回り、担当である私たちが気付かなかった所見を教えて下さり、日ごろおろそかになってしまっていた身体所見の重要性を痛感することが出来ました。肺循環科では、大郷先生を始めとして、辻先生、青木先生、上田先生に公私共にお世話になりました。全ての患者様が希少疾患を持っておられますが、行っている検査は(例外はありますが)決してマニアックなものではなく、大半がCommonなものであるものの、一例一例の検査所見を精確に吟味し、レントゲンや心電図1枚から診断に迫る様子は示唆的であり、教育的でした。
一昨年に現職(前橋赤十字病院心臓血管内科)に戻り、現在はこういった経験を活かし、循環器疾患全般の臨床を行っています。国内留学前には気付かなかった異常や、それに対しての解釈・追求が行えるようになり、私自身、臨床能力の向上・患者様への還元を実感することが出来ています。
偉大なる泉先生(許可を得て掲載)
肺循環科の先生方、専門修練医、レジデント一同
泉先生のサイン(ipad miniのカバー)

このような経験を経て、先日日本心エコー図学会第32回学術集会にて、2症例を発表させていただきました。1症例は心肺停止にて搬送となった患者様の臨床経過に関するものであり、これがBest Case Presentationを受賞することが出来ました。心停止にて搬送となった患者様を経胸壁心エコー図検査により脚気心を疑い、スワンガンツ、臨床経過から確定診断に至りました。また顕著な低酸素を認め、留置型スワンガンツカテーテルの先端lumenからのコントラストの注入により肺内シャントの診断に至り、剖検により肝肺症候群の診断に至りました。剖検の結果とともにご家族様に今回の経過をご報告させていただき、「今後の医療に生かしていただければ」というお言葉をいただいています。

今後は引き続き、循環器診療全般に邁進しつつ、心エコー図検査の腕を磨きつつ、新たに発足した県内の心不全地域連携に心がけていきたいと思います。また当院は、先日心房細動へのablation第1例を行い、また、これまで行えていなかったCPXや、Impellaの導入が決まりました。数年の間にはTAVIを始めとしたSHD診療の開始を目指していきたいと考えています。

もしも当院での診療に少しでも興味のある循環器内科の先生がいらっしゃいましたらご連絡をお待ちしています。是非とも一緒に新しいことに挑戦して行きましょう。

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