Awake V-A ECMO

こんにちは、佐々木です。昨今ECMOが話題になることが多いですが、今日はECMOと鎮静について書きたいと思います。

元々ECMOは重篤な呼吸不全・心不全の患者さんに適応されるため鎮静薬で患者さんを寝かしつけ人工呼吸器を装着した状態での導入となることが多い治療です。ECMOでサポートをしつつ回復を待つ、というのが基本方針ですが長期になると筋力など運動機能等の低下を来す廃用や人工呼吸器管理に伴う人工呼吸関連肺炎(VAP)などの合併症が問題となります。これらを最小限にするべく、覚醒状態でのECMO管理を行う「awake ECMO」という管理法が有ります。呼吸をサポートする「V-V ECMO」に於いてECMOの権威で「ECMOの神様」とも称されるスウェーデンのカロリンスカ大学病院のパルマー先生が提唱した治療ですが、ECMOでサポートされた患者さんは体を起こし会話可能で口から物を食べ、更には自らの足で歩きリハビリを行う事すら可能です。廃用や人工呼吸関連の合併症を減らすのみならず、患者さん自身が症状を訴えられるため異常の早期発見にも繋がります。私も英国でのECMO留学の際にECMO管理中にリハビリのために歩いている患者さんを実際に目にして大変感銘を受けました。V-V ECMOに於いては肺移植待機中の患者さんの予後を改善するなどエビデンスが蓄積されています(過度の呼吸促迫は肺を傷つける可能性が有り、全ての患者さんに適応される訳では有りません)。
V-V ECMO中にリハビリを行う患者さん(AACNホームページより引用)

一方で心臓を主にサポートする「V-A ECMO」での「awake ECMO」についてはこれまであまり積極的に行われておらず、検証もなされて来ませんでした。大きな理由としては心筋梗塞等の急性期の循環器疾患に於いては覚醒により患者さんが興奮し内因性カテコラミンが増大する(所謂「アドレナリンが出る」)と不整脈の増加により病状を増悪し得ると考えられる状況が多いからです。また、V-A ECMOはV-Vと比して管理が短期であることも要因です。とは言えawakeでのV-A ECMOにメリットがない訳では有りません。

今年の4月にEuro Heart Journalでpublishされた単施設観察研究”Awake venoarterial extracorporeal membrane oxygenation for refractory cardiogenic shock”ではawakeでのV-A ECMO管理に肯定的な結果が得られました。

P:Peripheral V-A ECMO導入となった難治性心原性ショックの成人例
E:ECMO期間中レスピ管理期間が50%未満の”awake ECMO”
C:ECMO期間中レスピ管理期間が50%以上の”non-awake ECMO”
O:主要評価項目(VAP率、ECMO合併症率)、副次評価項目(60日死亡率・1年死亡率)を比較

結果:Awake群(91例、39%)はnon-awake群(140例、61%)と比して有意にVAP合併率が低く(35% vs. 59%、p = 0.017)、気切・透析率・抗生剤使用量・麻酔薬使用量は全て低かった.またawake群は有意に60日死亡率が低く(20% vs. 41%、p = 0.018)、1年死亡率も有意に低かった(31% vs. 54%、p = 0.021).
Eur Heart J ACC 2021. Apr.より引用

当院では私の留学経験を生かし過去に1例だけawakeでのV-A ECMO管理を行ったことが有りますが、廃用が最小限に留められ合併症もなく経過し回復も速やかでした。ECMO期間中、その患者さんとは良好にコミュニケーションがとれ床上でしたがリハビリも行え確かな手応えがありました。対象となる患者さんは正直かなり絞られてしまいますが、今後も適応を見極めつつawake V-A ECMOを実践していければと考えています。

コメント

  1. 心臓移植の信じられないほどの旅は、いつも私を驚かせます。医療の進歩と人間の回復力の交差点を目の当たりにするのは、本当に驚くべきことです。臓器提供者と移植者双方の勇気が光り、命を救う臓器提供の多大な影響が強調されています。これらの進歩を祝うとともに、臓器提供の重要性についての意識を高め、世界中で臓器提供がより利用しやすくなるように取り組んでいきましょう。私たちは力を合わせて、心臓移植の変革の力を通じて、無数の命の物語を書き換え続けることができます。

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