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2023年度のメンバーと当科の現状紹介

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 皆さん、だいぶご無沙汰しております。心臓血管内科の庭前です。2023年度も後半が始まりましたね〜。今回はご要望の多い、当科の現状についてお知らせします。  当科は現在11名の医師で診療を行っております。常勤の丹下先生、庭前、峯岸先生、佐々木先生の下に、今年から来た8年目医師の岡田先生、その下は6人の後期レジデントの先生たちがいます。後期レジデントは3年目(医師5年目)の布施先生、富澤先生、滝沢先生、2年目(医師4年目)の石尾先生、児玉先生、1年目(医師3年目)の渡邉先生です。チーム制にして若い先生たちの教育に力を入れています。また、医師の働き方改革を推進するため、休日は交代でしっかりと休める体制にしております。みんなで一丸となって、日夜重症患者さんの診療にあたっています!!  今年度当院は以前のようなコロナ用病床確保が必要なくなったため、比較的ベッドに余裕があり、救急患者さんを受け入れやすい状況です。そのためか、ここ数年やや少なかったPCI(経皮的冠動脈インターベンション)の症例が倍増しています。また、心房細動のアブレーションも軌道に乗り、今月から週に2日行う予定にしています。そして、先月から心臓血管外科の先生とコラボしてTAVI(大動脈弁をカテーテル的に植え込む手術)を始めました!!こちらについてはまた別の機会に詳細をお伝え致しますね。  ということで、今年度も当科は患者さんファーストで頑張っていますので、ご支援のほど宜しくお願い申し上げます。

2022年度が始まりました!

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  みなさん、こんにちは。庭前です。だいぶ久しぶりの投稿です! 2022年度も始まりましたね〜。 3月で佐鳥先生、野尻先生、布施先生、富澤先生(旧姓 稲葉先生)が退職され、新しく西尾先生と石尾先生が当科に入りました。 佐鳥先生はご開業されます。長い間仲間として一緒にお仕事してくださって、どうも有り難うございました。今後は地域の患者さんのために、今までの経験を活かしてご活躍されることと思います。 野尻先生は当初より1年間の予定で来てくれていました。またいつか戻ってきてくれることを期待しています(笑)。 布施先生と富澤先生(旧姓 稲葉先生)は1年間別の病院に異動となりましたが、また来年戻ってきてくれます。 新しく入った西尾先生&石尾先生と共に、今年は8人のメンバーでたくさんの患者さんを救うべく頑張ります! 365日、24時間、当科医師が常に勤務している体制は変わらず継続していきます。 今年度も前橋赤十字病院 心臓血管内科をどうぞ宜しくお願いします(*´-`)

胎児大動脈弁形成術について

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こんにちは、佐々木です。本日は先天的に重度の大動脈弁狭窄症を有する胎児へ出生前に外科的治療を行うという驚くべき治療法に関する話です。 先日のニュースで先天的に重症大動脈弁狭窄症を有する胎児に対し、国立生育医療センターで国内で初めてとなる胎児治療が行われたと報じられました。 大動脈弁狭窄症とは、大動脈の入り口(左心室の出口)が極端に狭くなる病気ですが、成人では左心室に大きな負担がかかり心不全を来します。重度となると外科的手術やカテーテル治療を要する重大な疾患です。稀に先天的に有することがありますが、重度であると左心室が正常に育たずに左心室低形成症候群へ発展し生命に危険が及ぶとされます。 画像:Wikipediaより引用 左心室低形成症候群で生まれてきた患児は標準的にはノーウッド手術→両方向性グレン手術→フォンタン手術という3段階の手術を必要とし、手術が完了しても定期的な通院が必要となり日常生活への影響も少なくありません。 今回報じられた胎児大動脈弁形成術は胎児期に大動脈弁狭窄への治療を行い、左室の形成を促すための治療とのことです。 当科は主に15歳以上の患者様への治療を行っており、先天性心疾患を有する患児の治療の実際に詳しい訳ではありませんが、まさか胎児期に治療を行なうことが有るなんて想像もしませんでした。 方法は実に驚異的であり、妊婦さんのお腹から胎児の左心室まで針を刺してガイドワイヤーを通し、それに沿ってバルーンの付いたカテーテルを大動脈弁まで進めてバルーンを膨らませ、狭くなっている大動脈弁を広げるというものです(バルーンでの大動脈弁狭窄を広げる治療自体は成人症例でカテーテル治療として行われることがありますが、通常は足の付け根の血管からカテーテルを挿入して行きます)。 ニュース記事によれば欧米ではすでに行われている、とのことですがイタリア人循環器医師の友人にこの治療の事を話してみたところ、私と同様に大層驚いていました。 画像:米国 Nationwide Children's Hospitalホームページより引用 母体は硬膜外麻酔で行い、胎児には大腿部に鎮痛薬を筋注する様です。放射線透視は不要でエコーガイドで行われます。 心筋を直接針で刺すため心臓の外に血液が漏れることがあり得ますが、上記の米国の子供病院のホームページ記載によ

Awake V-A ECMO

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こんにちは、佐々木です。昨今 ECMO が話題になることが多いですが、今日はECMOと鎮静について書きたいと思います。 元々ECMOは重篤な呼吸不全・心不全の患者さんに適応されるため鎮静薬で患者さんを寝かしつけ人工呼吸器を装着した状態での導入となることが多い治療です。ECMOでサポートをしつつ回復を待つ、というのが基本方針ですが長期になると筋力など運動機能等の低下を来す廃用や人工呼吸器管理に伴う人工呼吸関連肺炎(VAP)などの合併症が問題となります。これらを最小限にするべく、覚醒状態でのECMO管理を行う「awake ECMO」という管理法が有ります。呼吸をサポートする「V-V ECMO」に於いてECMOの権威で「ECMOの神様」とも称されるスウェーデンのカロリンスカ大学病院のパルマー先生が提唱した治療ですが、ECMOでサポートされた患者さんは体を起こし会話可能で口から物を食べ、更には自らの足で歩きリハビリを行う事すら可能です。廃用や人工呼吸関連の合併症を減らすのみならず、患者さん自身が症状を訴えられるため異常の早期発見にも繋がります。私も英国でのECMO留学の際にECMO管理中にリハビリのために歩いている患者さんを実際に目にして大変感銘を受けました。V-V ECMOに於いては肺移植待機中の患者さんの予後を改善するなどエビデンスが蓄積されています(過度の呼吸促迫は肺を傷つける可能性が有り、全ての患者さんに適応される訳では有りません)。 V-V ECMO中にリハビリを行う患者さん(AACNホームページより引用) 一方で心臓を主にサポートする「V-A ECMO」での「awake ECMO」についてはこれまであまり積極的に行われておらず、検証もなされて来ませんでした。大きな理由としては心筋梗塞等の急性期の循環器疾患に於いては覚醒により患者さんが興奮し内因性カテコラミンが増大する(所謂「アドレナリンが出る」)と不整脈の増加により病状を増悪し得ると考えられる状況が多いからです。また、V-A ECMOはV-Vと比して管理が短期であることも要因です。とは言えawakeでのV-A ECMOにメリットがない訳では有りません。 今年の4月にEuro Heart Journalでpublishされた単施設観察研究 ”Awake venoarterial extraco
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 心房細動に対するカテーテルアブレーションを始めました!  みなさん、こんにちは。 庭前です。久しぶりの投稿です。 ついに当院で心房細動のアブレーションを始めました! 少し前に佐々木先生からもアップされましたが、やはり心房細動に対するアブレーション治療が有益だというエビデンスやガイドラインの改訂などがあり、当院でも行いたいと考えました。 以前から 心房細動以外のアブレーション治療は行っていますが、それとは手技が異なる部分が多々あり、心房細動については当院では行っていませんでした。 今回、治療経験の豊富な南健太郎先生(現在、獨協医大にご勤務です)に非常勤医師としてご協力いただけることになり、手技のご指導を仰ぎつつスタートを切れました。 スタッフ一丸となって、心房細動でお困りの患者様をしっかりと治療していければと考えております。 宜しくお願いします!!

右心機能に着目したV-A ECMOからの離脱指標

こんにちは、佐々木です。ECMOにまつわる文献の紹介すると言いつつかなり間が空いて漸く2回目です。 ECMOのごく簡単な説明は こちらの記事 をご覧下さい。 心臓の弱った患者さんにV-A ECMOを装着した後、ECMOはずっと着けていられません。その為いつかは離脱しなければなりませんが、安全なECMOからの離脱の指標は明らかとなっておらず研究が進められています。これまで左心機能にばかり目が向きがちでしたが、 2021年4月にJACCからpublishされたV-A ECMO患者79例を対象とした 韓国の単施設観察研究“Prognostic Implication of RV Coupling to Pulmonary Circulation for Successful Weaning From Extracorporeal Membrane Oxygenation” はV-A ECMOからの離脱の指標として右心機能に着目したユニークなペーパーです(まだオンライン公開のみ)。 既存のV-A ECMOからの離脱指標(LVEF>20%、LVOT-VTI≧10cm、僧帽弁輪S'≧6cm/s) はECMOの流量を極端に下げた状態でエコーを用いて左心系を評価していましたが、流量を下げる事により急激な血圧低下を来たし得る為、流量を下げないで評価出来ないか?というところから着想した様です。 V-A ECMOの流量を十分に維持すると左心は増大した後負荷のため機能評価が難しく、一方右心はECMOによる脱血のため前負荷が低下し単純な収縮力の評価が難しいと考えられます。そのため今回着目しているのが「右室-肺動脈カップリング」となります。右室の縮みやすさ(=エラスタンス:Ees)は前負荷や後負荷に依存しない収縮性の指標であることが知られ、血管の特性を動脈実効エラスタンス(Ea)と併せて心室のポンプ機能や心収縮のエネルギー効率をEa/Ees(心室と動脈のカップリングの指標)で評価出来るとされています(心機能が低下すると高値となる)。 この「右室-肺動脈カップリング」をエコーで推定するべく様々計測したところ、ECMOフルサポート下で計測した三尖弁輪S'/RVSP>0.33(右室-肺動脈カップリングの逆数的な指標)がV-A ECMOからの離脱成功をよく予測し既存の基

国内留学と日本心エコー図学会第32回学術集会でのBest Case Presentation受賞について

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この度、2021年4月23-25日に行われました上記学会にて症例発表を行い、上記を受賞し、国立循環器病研究センターへの国内留学を交えて報告いたします。 このブログに記事を投稿させていただきますのは、おそらく初めてのことであり、自己紹介からさせていただきますが、私は初期研修から前橋赤十字病院にて勤務させていただいており、心臓血管内科医師9年目星野です。本来であれば国内留学の経験を前橋に戻ってすぐにブログに掲載させていただきたいと考えていましたが、いろいろあって遅くなってしまい、上記受賞をきっかけに、合わせて掲載させていただく事としました。 私は、一昨年度の1年間、大阪府の国立循環器病研究センターにて専門修練医として、心不全科及び、肺循環科にて勤務させていただきました。前半の心不全科にて、心筋症や弁膜症を主に経験させていただき、心筋症の診断・治療、弁膜症の手術やカテーテル治療までのストラテジーの検討を経験しました。また、移植医療への道や緩和チームに参加させていただき、緩和医療を経験させていただきました。後半は希少疾患である様々な病型の肺高血圧症症例を担当させていただき、またBPAを(多くは助手ではありますが)経験させていただきました。成人先天性心疾患に対してのカテーテル検査・治療にも携わらせていただく等の経験をさせていただきました。 (私がそうであったように)国立循環器病研究センターをいうと無尽蔵に国費を用いて特殊な検査/試薬を行っているイメージを受けるかもしれませんが、そういうことはなく、共通して言えることは、一つ一つのデータを基本に忠実に、そして精密に吟味しており、この過程を経験する事が非常に勉強になりました。私は同院への留学を行う前までは、弁膜症の重症度評価等に関しては、生理検査でのレポート頼りであり、その計測の原理も十分に理解できていませんでした。心不全科の日々の生活は、午前午後に分かれるDuty(週10コマ)を、心エコー、心カテ、経食道心エコー等に分かれて行います。特に心エコーDutyでは、熟練の検査技師さんに混じり検査を行い、心筋症、弁膜症等の検査を行います。私のレポートの記載によっては治療方針が大きく変わる事となり、ひいては患者様の人生に影響を与えかねない為、正確な評価が必要となります(もちろんスタッフのチェックが行われ、必要事項の取り漏らしは